その手に触れたくて
「つか、アイツが風邪ってすんげぇ珍しいよな」
「うん…」
「今まで引いた事ねぇーと思うけど、俺の記憶上」
「いつから?」
袋に視線を落としてたあたしはスッと直司に視線を向ける。
「うん?」
「風邪、いつから引いてんの?」
「さー、俺ずっと会ってなかったからな。つかよ、誘っても全部断ってたから…アイツ」
「何で?」
「さー、知んねぇけど何か用事があるって毎晩言ってた」
「そっか…」
「んじゃあ、俺帰るわ」
「あ、うん。ありがと」
「ま、アイツ根性あっからずぐ治ると思うよ」
そう言った直司は口角を上げたまま軽く手をあげ原付を発進させた。
直司の姿が見えなくなった後、あたしは袋をギュっと握りしめたまま考えてた。
“用事が毎晩あるって言ってた…”
まさか、隼人…
とりあえず家の中に入って、キッチンを使わせてもらった。
直司が買ってきてくれたお粥を鍋で煮詰めて冷蔵庫にあった梅を潰して梅お粥にしてあたしは隼人の部屋に行った。
まだ寝ている隼人を見ながらあたしは出来たてのお粥をテーブルに置く。
時間が経った所為で隼人の額に置いているタオルはもう冷たささえなくなってて、あたしはそのタオルの変わりに冷えピタを額に張り付けた。