その手に触れたくて
「…ん」
と、捻る様な呟きで隼人は寝返りを打ち、薄ら目を開ける。
「あ、ごめん。冷たかった?」
「あぁ。でも冷たくていい感じ」
「さっき何か買いに行こうと思って外に出たら直司に出会った。これも、飲み物も買って来てくれた」
「あー、そう言えば俺言ったっけ…もう記憶にねぇ」
隼人は記憶を辿る様に考え込み顔を顰める。
「隼人…」
「うん?」
「何であたしに連絡してくれなかったの?」
沈んだ表情をしたあたしに隼人はポンとあたしの頭に触れ身体を起す。
「そんなの決まってんじゃん。美月に心配かけたくねーからだよ」
痛って…と呟きながら伸びをする隼人にあたしは悲しそうな瞳で隼人を見つめた。
「って言うか連絡来ない方が心配する」
「悪い。風邪なんてダサくて美月になんて言えねーよ」
「言ってよ、もっとあたしを頼ってよ!!」
そう言うと隼人は柔らかく微笑んだ。
さっきよりも少し表情がマシになった隼人は、まだしんどそうだけどクスクスと笑った。
「なんか俺と美月の立場逆じゃん。俺が美月を守んなきゃいけねーのに何も出来てねぇ…」
隼人はさっきの表情から一転しスッと笑みを消す。
「別に隼人にしてもらう事はないから。そのままでいいから」
そう言ったあたしはスッと視線を後ろのテーブルに向けて、
「持って来てくれた奴を温めただけなんだけど。…キッチン借りてごめんね」
もう一度あたしは隼人に視線を向けた。