その手に触れたくて
「隼人?」
「うん?」
返事をする隼人の顔をどうしても見る事が出来ず、あたしはただ減っていくお粥をぼんやりと見つめてた。
「どした?」
口を開かないあたしを不思議に思ったのか隼人は進めていた手をピタリと止め、あたしをの顔を覗き込む。
不意に合ってしまった視線からあたしは咄嗟に逸らし深く息を飲み込む。
「う、うん」
「何?」
「隼人さ、ずっと何してた?…学校にも来なかったし。って言うか夜、何処行ってた?」
一瞬目線をあげると隼人もあたしを見てたのか、視線が絡まり合う。その絡まり合った視線から隼人はスっと逸らし、手に持っていたスプーンを置き、後ろのベッドに背を付けた。
「美月の兄ちゃんの仕事場に行ってた」
一息吐いてからそう言った隼人に思わず目を見開く。
「お兄ちゃんの仕事場?」
「あぁ」
ゴホッゴホッっと咳き込む隼人の背中をあたしはゆっくりと擦る。そんなあたしに隼人は、「ごめんな」と言ってあたしが差し出したポカリを口に含んだ。
「ねえ、ずっと行ってたの?」
「あぁ」
「何で?」
「何でって美月との事、認めてほしかったから」
「だから何でそこまですんのよ。隼人、馬鹿じゃん。お兄ちゃんに言ってもそんな事、許す訳ないじゃん」
「いや、」
そこまで言った隼人はさっきとは打って変わって表情を柔らかくし、あたしの頭をゆっくりと上下に撫でる。