その手に触れたくて

「隼人は、それでいいの?」


沈んだ声を出し、隣に居る隼人の肩に頭を乗せる。


「何が?」

「あたしには良く分からないけど、仲間抜けるとか…そんなんでいいのかなって。あたしの為にそこまでしてそれでいいのかなって」


何か苦しかった。

心が何だかムシャクシャしてた。

もちろん喧嘩は大嫌い。辞めてくれた、抜けてくれたって聞くと本当は凄く凄く嬉しいはずなのに何でか知んないけど心はしっくりこなかった。


「美月を大事にしたいから」


そう言った隼人の背中に両腕を回しきつく抱きしめる。


「ごめん…」

「何で美月が謝んの?」

「あたしの所為だ。隼人がこんな風邪引いたのもあたしの所為だ。…ごめん」


そう言ったあたしの頭を隼人はゆっくりと撫ぜ、右腕をあたしの首に回す。


「美月は何も悪くない」

「ごめんね…。お兄ちゃんが煩くなったのお父さんが亡くなってからなんだ。だからあたしはいつもウンザリしてた。でも、今回は本当に嫌になったカモ…」

「だから悪く言うなって。美月の事、心配してんだって。しかも付き合った男がこんな俺。響さんからしたら最悪じゃん」


隼人はそう言って情けなく笑った。


「でも…」


続けられた隼人の言葉に、「何?」とあたしは言葉を返す。


「でも、俺を助けてくれたのは響さんだから。多分きっとあの時、響さんに助けてもらってなかったら俺死んでたかもしんねぇ」

「そんな事、言わないでよ」


思わず怖くなってしまったあたしはさっきよりも隼人をキツク抱きしめた。
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