その手に触れたくて
「でも俺は少なからず響さんに感謝してる。あの時、俺がやられて喧嘩した後日、美月の兄ちゃん、そいつら見つけて言い合ったらしい」
「お兄ちゃんが?…何で?」
「美月を巻き込んだからって、俺は聞いたけど」
「そうなんだ…」
隼人の言ってる事も少しは分かる気がする。
助けてくれたのはお兄ちゃんだ。そして最後に隼人を病院に連れて行ってくれたのもお兄ちゃん。
ありがとう。って言うべきだけど、何か複雑な気分。
「美月?」
「うん?」
「つか、離れろって」
あまりにキツク抱きしめていた所為で隼人は顔を顰めてあたしを見る。
「嫌だ」
もっと近くに居たいあたしはそう言って隼人を抱きしめた。
「つか、風邪うつる」
咳込む隼人はあたしの身体を離そうとする。だけど、それでも離れないあたしに、
「なぁ、聞いてんのか?風邪うつるぞ」
そう言って隼人は小さくため息をついた。
「別にいい」
「は?」
「別にうつってもいい」
「よくねーだろ」
「隼人の風邪ならうつってもいい」
「そー言う問題じゃねぇ」
「だって、寂しかったんだから」
沈んだ声を出したあたしはキツク抱きしめていた腕を緩め、隼人を見上げる。その見下ろしてくる隼人にあたしは顔を近づけ、そっと唇を重ね合わせた。