その手に触れたくて
「ここに居たらまた来るかな」
「来たら話すの?」
「いや、目の癒しにしたいだけ」
「何それ」
「だってなかなか会えないじゃん」
「でも女いるんでしょ?先輩」
「そう。居るんだよなー…別れちゃえばいいのに」
もっと聞きたくない会話だ。
早く出て行ってほしい。また熱が上がりそう。
“うるさい”なんて、夏美じゃあるまいし、そんな事言えない。
どうしよっか…。と小さく聞こえないくらいにため息を吐いた時だった。ガラっと開いた扉の音で、
「あっ、」
「あっ、」
2人の後輩の同じハモった声が小さく響く。
「悪りーけど、そこどいてくんね?」
そう言ったのは隼人の声。
どー言う位置で女達は居たのか知んないけど、隼人の声が面倒くさそうだった。
「あ、ごめんなさい」
さっきとは打って変わって声を変え、敬語にする女は移動したのかシャっとカーテンが開く音でビクっとあたしの身体が動いた。
今、開けないでほしいと思った。
後輩たちの反応が気になる。まさか隼人の知ってる人物がここに居た事に女達はどんな表情をしてたんだろうと気になってしまった。
「美月?」
剥がれた布団の隙間から光が入る。
ゆっくりと視線を向けると隼人は口角を上げて微笑んだ。