その手に触れたくて

「大丈夫か?」

「うん」

「さすがに熱いな、これ」


額にあるタオルを掴んで隼人はカーテンから出る。

ガラガラと氷の音と水の音が聞こえ、少ししたらまた隼人は姿を表す。


額に乗せられるタオルはやっぱり冷たくて心地いい。


「まだ、居るの?」

「え?」

「そこに誰か居る?」


あたしは視線をカーテンの向こうに向ける。


「いや、誰もいねーよ。どした?」

「あー…うん」

「何?」

「隼人の話してたから」

「俺の?」

「うん」


ビックリしたのも当然の事だろう。

隼人は茫然としてあたしを見つめると、パイプ椅子に腰を下ろす。


「何で俺?」

「さぁ…」

「さぁ…って何?」

Γ隼人が好きなんだって」

Γだから?」

Γだからって…。だって言ってたんだもん」

Γふーん…」

Γあたしと別れればいいのにって言ってた」

Γへー…なんならここでアピールでもしとく?」

Γアピール?」


何のアピールだかさっぱり分からないあたしは少しだけ首を傾げる。





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