その手に触れたくて
18

「寒っ、」


外に出た瞬間、肌を震わせるくらいの寒さが襲う。風邪を引いてしまった所為か自棄に身体が震える。

だけど保健室に行く前よりかは少し楽になってる気がする。


歩いてる途中、寒さで小刻みに震えるあたしにフワッと肩に何かが掛る。


視線を落とすとあたしの肩に隼人のブレザーが掛っていた。


「えっ、ちょっといいよ」


コートも着てないブレザーとシャツ姿の隼人。その貴重なブレザーを掛けてくれた隼人にそう声を出し、あたしは隼人のブレザーを掴んで隼人に押しつける。


「いいから着てろって」

「そんな恰好じゃ、また風邪引くって」

「いいから」


シャツ姿の隼人。だけど首にはちゃんとあたしがあげたマフラーが巻かれている。ブレザーがないから何とも言えない変な格好だ。

未だに押しつける隼人のブレザーを、隼人は奪い取りもう一度あたしの肩に掛ける。


「ごめん」

「とりあえず病院行くぞ。念の為、薬だけもらっとけ」

Γうん」


自転車に跨る隼人の後ろに座る。

グッとペダルを踏み締めた隼人の腰に手を回し、あたしは隼人の背中に頭をくっ付けた。


寒さで温かさなんてまったく感じなかったけど、隼人の身近に居られることが嬉しかった。





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