その手に触れたくて
「隼人!?」
放課後、“今日一緒に帰れねぇ”って言われて隼人の背中をずっと見てたあたしは、その背中に向かって隼人の名を呼んだ。
「どした?」
声を上げたあたしに隼人は振り返り進めていた足を止める。
「何処…行くの?」
不安そうな声を出すあたしに、隼人は視線を逸らせる事なくあたしをジっと見つめた。
「あー…ツレん所」
「ツレ?」
「あぁ」
「…誰?」
「誰…?」
同じ事を繰り返してきた隼人はあたしを見つめたまま一瞬、眉を顰める。その表情が“聞くなよ”って感じてしまったのは気の所為だろうか…
「一緒に居る人は誰かなって…」
「何で?」
「何で…?」
思わずあたしまでもが聞き返してしまった。
「美月の知らない奴」
「あたしの知らない人?」
「あぁ」
「そっか…」
あたしの馬鹿。そうじゃないって!!
何でそこで納得してんのよ。思わず自分の馬鹿さ加減に深いため息が漏れ、視線を下に落とす。