その手に触れたくて
「ちょっと色々あって…。だから美月に返事する時間もなかった。っつーか、全然気づいてなかった。マジごめん」
「…そっか」
それ以上、深くは聞かなかった。
とりあえず先にこの痛みを治したい。ズキズキと走る痛みが辛くて、あたしは顔を顰めたまま、こめかみを擦る。
「どした?」
「ううん…」
「もしかして美月、寝てねーの?」
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃねーだろ?マジでごめんな。俺の所為で」
さっきよりも一段と表情を崩す隼人は深いため息を吐き捨て、あたしの手を握った。
繋がれたまま足を進め、お互い何も言わずに保健室に来た。入ったそこは誰も居なくて、隼人は救急箱をあさる。
そこからすぐに出て来たのは頭痛薬だった。
「美月、とりあえず飲め」
「うん…」
薬を受け取ると隼人はグラスに水を注ぎ、あたしが薬を口に含んですぐにグラスを渡す。
全ての水をゴクゴクと喉に流し込んだあたしは小さく息を吐き捨てた。
「とりあえず寝てろよ」
「大丈夫だよ、薬のんだし」
「いや、寝てろ」
そう言った隼人はベッドに足を進めて布団を剥ぎとる。
「先生居ないし…」
「そのほうがいいじゃん」
「うーん…」
「美月?」
ポンポンと叩くベッドに視線を移し、あたしは言われるがままベッドに寝転んだ。