その手に触れたくて
「ありがと…」
「いえいえ、どーいたしまして。さ、食べよ」
「うん」
だけど、食べる気なんて全くおきなかった。
大好きなメロンパンが食べれないほど、隼人と別れた事が相当にショックだった。
正直言ってもう1週間近くまともにご飯なんて食べてない。喉に何も通んないほどにまで身体が拒否してる。
だから3キロも落ちてた。
痩せたいと思ってたあたしも全然減った事に嬉しくなんてなかった。
「…食べないの?美月」
「……」
クリームパンを頬張る夏美は不安そうな顔であたしを見つめる。
「食べないと、倒れちゃうよ?」
「うん…」
「美月が食べないなら、あたしが貰っちゃうよ?」
「……」
そう言った夏美は袋からメロンパンを出し自分の元に引き寄せる。夏美のほうに引き寄せられていくメロンパンをあたしはジッと見つめてるだけだった。
「…いつもの様に、ダメって奪ってよ!!」
少し怒り気味に声を出した夏美は悲しそうな顔であたしを見つめ、メロンパンをあたしの前に置く。
「ごめん、夏美…。しんどいや、あたし」
「…美月?」
「ごめん、保健室行ってくる」
もう泣きそうだった。いつも隼人が買ってくれてたメロンパン。
思い出したくないけど、思い出しちゃう。
沈んだ声でそう言って足を進めて行くあたしに夏美は何も言わなかった。