その手に触れたくて
「…美月、ちゃん?」
そう戸惑いながら聞いてくる直司をあたしはジッと見つめた。
「ねぇ、何で?何でなの?」
「ごめん。俺、よく分かんねぇから…」
「……」
「だから、それが答えなんじゃないの?」
“…それが答えなんじゃないの?”
頭の中でさっき直司が言った言葉か駆け巡る。
ごめん。そう言われても何か分かんないよ。答えって何?
あたしには…
何も、分かんない。
スッと掴んでいた直司の腕を離すと同時に直司は何も言わないまま足を進めて行く。
まるで、直司までもがあたしを避けて居るように感じた。
どうして人ってそんな簡単に変われるんだろうって思った。この前まであんな仲良くしてたのに、どうしてそんなにあっさりと突き放す事が出来るんだろって思った。
どうして…
人の気持ちまでもがそう簡単に変わっちゃうのか、あたしには分かんなかった。
隼人はもうあたしの事を何も想ってはくれなかった。
もう隼人の中にあたしは完全に居なくなってた。
こんなにもあっさりと、こんなにも簡単にあたし達は終わってしまった。
認めたくなんてない。こんな終わり方、認めたくなんてないよ…
「隼人…」
漏れる声とともに目が熱くなってく。
ジワジワと潤んでくる瞳から、まだ眠ってた涙が頬を滑り落ちた。