その手に触れたくて
「おはよ、夏美(なつみ)」
いつも通り声を掛けると、夏美は咥えていたタバコを地面に磨り潰しあたしを見ながら立ち上がった。
「あ、おはよ。美月(みづき)」
「また吸ってたの?バレちゃうよ?」
「バレないって…。ところで美月はまた行ってたの?」
足を進めて行く夏美の後を駆け足で追いながら着いて行く。
「わかる?」
「線香の匂いするよ」
夏美はチラッと後ろを振り向きながらニコッと微笑んだ。
そんな夏美にあたしは苦笑いをする。
「夏美こそタバコの匂いするよ?」
「へーき。香水ぶっかけるから」
「ふーん…」
夏美とは高1の時に同じクラスで仲良くなった。
あたしとは全然、雰囲気が違う夏美はどう見ても浮いている。
髪だってすごく薄い茶色のあたしに比べて夏美は金に近い。
性格だって凄いサバサバしてるし…
「もう終わってるっぽいよ」
夏美がそう言って、昇降口まで着いたあたしはキョロキョロと辺りを見渡した。
そこには少しずつ廊下に生徒達が顔を表す。
「あ、本当だね」