その手に触れたくて
「じゃあ、行きますか」
颯ちゃんがそう言って立ち上がると、あっちゃんは吸っていたタバコの火を消し立ち上がる。
店の中に入って行く、颯ちゃん達に続いて隼人も足を進めて行く。
未だに地面に座り込み、荒れた息を整えようとしている直司にあたしは目を向けた。
「ごめん…あたしの所為で」
小さく呟くあたしに、直司は顔を上げ優しく微笑む。
「美月ちゃんは悪くないよ。悪いのは夏美」
「えっ!何であたし?」
「お前が最後に乗るからだろ」
「だってそれは…」
そこまで言って、夏美は直司の前にしゃがみ込みニコっと笑った。
「ナオちゃん、ごめんね…」
少し首を傾げて言う夏美に、「可愛くねぇ…」と直司は呟いて店の中に入って行く。
「夏美…」
思わずため息混じりで呟くと、夏美はハハッと笑って、
「いっぱい食べよっと」
何も悪びれも無い様に微笑み店内へと足を進ませ、その後をあたしは呆れながら着いて行った。