その手に触れたくて

疑う事ってあると思う。

今のあたしは疑う事しか出来なくて、誰かの所為にしなくちゃいけない様になってた。


その誰かは分かんない。何をどう疑うのかも分かんない。ただ、誰でもいい。誰でもいいから何でもいいから疑いたかった。


ため息とともに一日は終わる。気づけば夏休みも終わりで、始業式の朝を迎えてた。


「おはよ、美月」

「おはよ」


いつもの場所。いつものその夏美の声が迎えてくれる。だけど、気分が重く頭さえもガンガンと痛みだす。

何も食べてなかった毎日が重なって今頃、身体に影響してきたんだろうか。目の前が今すぐにでも真っ黒になりそうな感覚に襲われる。


「美月、大丈夫?」


上履きに履き替えた途端、視界が半分に途切れる。


帰りたい…

帰りたい…


「ねぇ、美月?」


立ち止まってガンガンと響く頭を両手で押さえる。始業式初日のザワザワとしていた廊下から聞こえてくる声が次第に遠くの方で感じるとともに一瞬でプツンと、何かが途切れた…



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