その手に触れたくて
「美月、なんか無理してんじゃない?全然食べてないでしょ?」
「なんか美月ちゃん、凄く痩せた」
そう心配そうに言ってくる二人から視線を逸らせた時、ふと気になった事があった。
あたしがここに居るって事は…
「ね、ねぇ?」
「うん?何?」
首を傾げる夏美の隣で相沢さんが口を開く。
「そう言えば、あたしを運んでくれたのって誰?」
そこは凄く気になる所だ。
だけど、あたしが言った事に夏美と相沢さんは何も言わない。頭を擦りながら二人に視線を送ると、何か変な事でも言ったんだろうかってくらいに2人はお互いに目を合わせて…
その瞳を泳がした。
「ねぇ、誰?」
再度聞くあたしに二人は黙りこむ。さっきまで話してたのが嘘の様に今度は何も言わなくなった二人を変に思ってしまった。
「え、誰?もしかして皆が嫌って言ってる日本史の先生じゃないでしょーね。だったら嫌だよ、あたし」
「……」
「え、マジなの?」
思わず黙る二人にそうだと実感したあたしは顔を思わず引きつる。
だけど、
「…違うけど…」
小さくて小さくて聞こえないくらいに呟いたのは夏美だった。