その手に触れたくて
じゃあ、どうしてそう思うのなら、あたしは隼人から別れを告げられたの?
ねぇ、何で?そう思ってんのなら別れないじゃん。
ねぇ、どうして?何で?
誰か、誰か…教えてよ。
ねぇ、隼人?答えてよ、もう何もかもが分かんないんだよ。
これ以上、苦しめないでよ。だったら変な優しさなんて何もいらないよ、ほっといてよ。
それからあたしは布団から顔を出す事はなかった。始業式だからほとんどの生徒はもう帰ってる。時間なんて何も分からないままベッドで過ごし、
「…安藤さん?」
何度か聞いた事のある柔らかい保健の先生の声で布団を剥ぎとった。
「…すみません」
顔を出し目の前に居る先生に顔を顰める。そして辺りを見渡すと、そこにはもう夏美と相沢さんの姿はなかった。
「全然いいけど。どう?」
「身体が痛くて」
「うん。激しく倒れたからね…まぁ、日にち薬で治っていくと思うけど病院に行ったほうがいいわよ。行って、点滴してもらったほうがいいかと思うの」
「あ、はい」
「で、家の人に電話したらさ。お兄さん?だっけ。来てくれるらしいよ」
「えっっ!!家に電話したんですか!?」
「だってそんな調子じゃ帰れないでしょ?帰ってる途中でまた倒れたりしたら大変でしょ」
「いや、でも…」
「あれ?なんかいけなかった?」
「まぁ…」
「でも、お母さんがお兄さんに連絡するって言ったから」
心がどんよりとした。ママもなんでお兄ちゃんに連絡すんのか分かんない。お兄ちゃんと会うなら一人で帰ったほうがマシだ。
よりによってお兄ちゃんだなんて、ありえない。