その手に触れたくて

まだ始まってばかりの2学期なのに、あたしは早々次の日まで休んでしまった。

完全に回復していなかった身体も、連休を挟むと同時に次第によくなり、あたしはまた学校へ行く。


もちろん夏美も相沢さんもカナリ心配してて、それがなんだか本当に申し訳なく感じた。保健室で何だかギクシャクしたままの状態だったから、はっきし言ってどう話したらいいのか分かんなかったけど、夏美と相沢さんは何もなかった様に接してくれた。

でも、どうしてもどうしても“ごめんね。ありがとう”って言いたくても言えないのが隼人と言う存在だった。

何度か携帯を開いてはメールを送ろうか考えたけど、やっぱし何も送る事はできなかったし、隼人から入ってくる事もなかった。


数回、廊下で出くわした隼人は、あたしを何も見ようとはしない。もう、とっくに終わった事だけど、“美月ちゃんを運んでくれたの隼人なんだよ”って言葉が頭から離れずにいた。

その答えがどーしも聞けなかった。学校と言う周りの目までも気にしてしまうから声なんて掛けられなかった。


こんな日が続けば続くほど、だんだんと凄く思っていた気持ちが次第に薄れて行く。隼人と言う存在があたしの中から少しづつ消え去って行きそうだった。


触れたくても、もう触れられない存在。

近づきたくても、近づけられない存在。


あたしには、もう遠い存在になってた。



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