その手に触れたくて
夜になるとだんだんと風が冷たくなってくる秋の季節。
普通に学校に行って普通に帰る。何の特別もない日々が刻々と過ぎて行ったある日の事だった。
「ねぇ、暇してんならちょっと付き合ってよ」
夏美達と遊んで、もう外が真っ暗になった頃、コンビニから出たあたしに2人の男が近づく。
「ごめんなさい。帰るんで…」
「いいじゃん。ちょっとだけ…ちょっとだけだから」
「そうそう、ちょっとだけ」
しつこくあたしの前でダラダラと話してくる男達にだんだんと嫌気がさす。
嫌と言ってるあたしに引きさがろうともしない男に正直ムカツク。
「ほんと、ちょっと遊ぶだけだから」
そう言った男は咄嗟にあたしの腕を掴み、その動作にあたしの身体がビクっと震えた瞬間、
「ねぇ、俺の女に何してんの?」
不意に聞こえた低い声に何故かドクンと心臓が波打った。
「男、居んのかよ」
チッと舌打ちとともに掴まれていた腕がスッと離れる。開放的になったその手をあたしは反対側の手で握りしめた。
「大丈夫?」
そう聞いて来る男の声にあたしは慌てて振り返って、
「あ…」
思わず小さく声を漏らした。