その手に触れたくて

「何?」


振りかえる剛くんは不思議そうに首を傾げる。


「あのっ、会わせて下さい」

「え?」

「隼人に…隼人に会わせて下さい」


剛くんはゆっくりとあたしから視線を逸らす。


「会って、どーすんの?」

「会って聞きたい事あるんです」

「俺なんかに言うより学校で会うんじゃねーの?」

「学校じゃ何か声掛けづらいって言うか…」


もし、声掛けて逸らされたら周りの目が痛く感じるから。

だから、学校では話せない。


「多分、俺がアイツに言っても無理だと思うよ」

「無理って?」

「そのまんまの意味。つーか、アイツと最近会ってねーから」

「そう…ですか…」

「なんつーか、俺にはよく分かんねーけど、多分きっとアイツから言ってきた事が全てだと思うよ?」

「全て…って?」

「別れた事は聞いたけど、それ以外は何もしらねーから俺。だからその理由の全てとか、なんつーかアイツが言った事が全部」


分からない。それが分からないから聞きたいのに。

でも剛くんにまでそう言われたのなら、もう諦めるしかないと思った。いつまででも引きずっちゃいけないと思った。

それこそ…重いよ、あたし。
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