その手に触れたくて

剛くんと別れて帰る途中で、またあたしの頭が混乱する。


“アンタのその純粋さを壊さねーほうがいいよ。深入りしてもよくねーよ”


そう言われた別れ際。さっぱりその言葉の意味が分かんない。

一から順番に考えてみても分かんなくて、ただ思いついたのが…


“隼人”に深入りしてもよくねーよ。…にしか繋がる事はなかった。だからますますあたしの頭を混乱させる。

あたしの純粋さ?隼人に深入りしたら、あたしがダメになって今のあたしが壊れるって事?


グルグルと頭の中を色んな言葉が駆け巡り、余計に分かんなくなってた。



「もー…嫌」


帰ってベッドに寝転ぶあたしは小さく声を漏らす。もう、ほんとにもういいや。もう忘れたほうがいいんだ。

そう思いながら毎日過ごしてた矢先だった。


11月終わり。もう本当に隼人があたしの心から少しづつなくなりかけていた時だった。本当に“隼人”って名前を口ずさむ事もなければ隼人の事を考える日々はほとんどなくなってた。

学校でもあたしが避けてる所為か、隼人が避けてる所為か分かんないけど、ほぼ毎日といっていいほど会う事はなかった。

と言うよりも来てるかどうかすら分かんなかった。


そんな、そんなある日の事だった。




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