その手に触れたくて

「その美月って子、前付き合ってた女だろ?」

「あぁ」

「つか関係ねーんじゃねーの?」

「まぁ関係ねーって言えば関係ねーよな。俺もさ、詳しく知らねーんだよ。アイツ何も言ってこねーから」

「まぁ、隼人はそー言う奴だからな」

「つかよ、聞いた話だけど、美月ちゃんのお兄さんって響さんらしい」

「えぇっ!!それマジで言ってんの?あの、安藤響だろ?」

「あの、トップに立つ奴って言われてた人だろ?」

「マジで?」

「あぁ…」


また…お兄ちゃん。

そう思ってしまった。また、これはお兄ちゃんが関係してるんだろうか。


だけど、凛さんは違うみたいな感じでそう言ってた。


何か、あたしのしらない所で何かが起こってる。分かんないけど、それが途轍もなく嫌な予感がした。もう、隼人の事なんて忘れようとしてたのに…って言うか、ほぼ忘れかけてた。

もう、あたしには必要のない人って、そう思いこんで必死で忘れようとした。


来る場所が悪かった。通りかかった所が悪かった。だったらこんな会話を耳に入れる事なんてなかったはず。通り掛ったとしても隼人の名前を出されてなかったら、あたしは通り過ぎてた。

どうして偶然が偶然を呼ぶんだろ。


全部、偶然の出来事なのに…


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