その手に触れたくて

「え…、美月…ちゃん?」


戸惑い気味にそう呟かれた声でドクンと心臓が高鳴り俯いていた顔が次第に上がる。

出入り口付近に停めていたバイクの近くに来たのは敦っちゃん。


敦っちゃんはあたしを見た途端、焦った表情をする。

ジッと何も言わずに見つめる先。敦っちゃんを通り越して見えるのは、その声に気づいた直司と颯ちゃん。だけど、同じくあたしを見た途端、一瞬にして顔色を曇らせた。


まるで、“ヤバい”って言うその表情が3人の顔から読み取れる。


残りの3人はもちろん初めて見る顔。だけど、なんとなく雰囲気を読み取ったのか、お互い顔を合わせてた。


「ひ、久し振り。元気?」


ぎこちないその敦っちゃんの言葉に思わず顔色が曇る。

まるで、何もなかったかのようにしている態度。


だから、


「隼人が…どうかしたの?」


思わず口を開いて聞いてしまった。


「あ、いや…何もねーけど」

「…聞こえたんだけど」

「マジで何もねーから。…マジで」


何が何でも言っちゃダメだと言う雰囲気だからこそ聞きたくなってしまう。でも、敦っちゃんは念を押すように強く言ったけど、どうみても“どうしよう”って言う表情が凄く出てる。

背後に居る直司だって、颯ちゃんだって、あたしとは話したくないオーラを凄くだしてる。


人間って不思議。だからこそ、余計に聞きたくなるし、余計に気になってしまう。


「あたしの事忘れる為って、何?」

「あ、いや…」


あたしから視線を逸らす敦っちゃん。どうみても怪しさ満開って感じの表情に、余計にあたしは顔を顰めた。
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