その手に触れたくて

敦っちゃん達を見てたけど、もうこれ以上何も言ってくれないだろうと確信したあたしは何も言わずに敦っちゃんに背を向けて歩きだす。


「あ、美月ちゃん…」


そんな声が背後から聞こえたけど、あたしは何も言わずに足を進めた。

何がどーなってんのか本当に分かんない。もう、隼人とはとっくに終わってて未練すら残さない様に…ってそう自分の中で決めてたのに。

でも、いざ隼人の名前を聞くと思いだしちゃう。

何もかも、今まであった事全てを思い出しちゃう。


何で別れちゃったんだろう。とか、ほんとに何があって、こんなふうになったんだろうとか考えてしまう。

ホントにホントに突然だった。隼人から別れを切り出されたのは、本当に突然だった。だから、認められない部分は沢山あった。


でも、もう別れてから5カ月近くは経つ。


忘れたくないけど、忘れようとしていた隼人の名前。やっぱし聞いちゃうとあたしの頭の中は隼人で埋め尽くされる。


この、あたしが知らない間に何があったの?隼人は何をしてるんだろう。


その日はずっと隼人の事ばかり考えてた。今更電話なんて出来ない。今更普通に接する事も出来ない。

だから、余計に頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのかなんてあたしには分かんなかった。






< 523 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop