その手に触れたくて
21

刻々時間が過ぎるのも早ければ、何もない1日が過ぎ去っていくのも早い。

早いけど、あたしの頭の中は未だにゴチャゴチャしてて、あの日のままで止まってる。


「ごめん、相沢さん…」


直司達を見掛けてから5日。


結局は、結局はあたしが頼る道は相沢さんしか居なかった。

ただ、相沢さんなら何か知ってると直感的に思っただけ。


今更、隼人の事聞いてどうする。って思ったけど、やっぱしあたしは隼人を想うばかり。出来るだけ未練は残したくなかったけど、やっぱし未練がましいって思う程、隼人じゃないとダメだと自分で思ってしまった。


「あ、美月ちゃん…どうしたの?」


放課後の教室。

用事があると先に帰った夏美と別れた後、あたしは一人で相沢さんが居る教室へと向かう。

今から帰ろうであろう相沢さんは鞄を肩に掛ける。


「あ、うん…」

「なんかあった?」

「ちょっと…」

「ちょっと?」

「うん」

「え、何?どーしたの?」


相沢さんは首を傾げながらあたしを見つめる。


「あ、うん…。ちょっと時間ある?」

「うん。いいけど」

「でもここじゃ、ちょっと…」

「じゃあ、喫茶でも行こっか」


そう言った相沢さんは微笑んで、足を進めた。




< 524 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop