その手に触れたくて
「あ?マジかよ…」
「マジです」
隼人は小さく舌打ちをし、片膝を立てて壁に背を付け、もう一度メニューに目を向けていく。
「なぁ、ウーロン茶でいい?」
不意に聞こえた声に視線を向けると隼人はあたしを見ていて、「ウーロン茶…」と、もう一度声を出す。
「あ、う、うん」
咄嗟に聞かれた事もあり、あたしは慌てて頷く。
「じゃあ、ウーロン茶6つと…」
「俺、特上カルビと上の塩タンと…、あっこれ全部6人前で。つーか6人前で足りねぇよな…10人前とかいっとく?」
あっちゃんは上機嫌に笑いながら言って、あっちゃんの前に座って居る颯ちゃんは、
「お、いいねぇ」
と笑いながら答える。
「おい。特上ばっか頼んでんじゃねぇよ」
上機嫌に盛り上がる2人に直司の不機嫌な声が飛ぶ。
「まーまー、そんな怒んなって。ほら水でも飲めよ」
颯ちゃんはそう言って隣に座る直司を宥め、水を差し出す。
「うぜぇ…」
直司は顔を顰めたまま呟きながらポケットからタバコを取り出し火を点けた。