その手に触れたくて

ガチャンとドアが閉まったと同時に夏美の深いため息が零れ落ちる。


「ごめん、美月」


顔を顰めたまま夏美は小さく呟く。


「な、に?」


困惑した表情のまま、あたしは二人をジッと見た。


「ごめん美月ちゃん…あたしが響さんに言おうって言ったの」

「え?」


お兄ちゃんに言ったの?


「剛が言うには響さんしか居ないって言ったから」

「……」


…それは知ってる。

でも、お兄ちゃんには…


「でも、…ごめん」


頭を深く下げる相沢さんを、ただただあたしは見つめてた。

そうだよ、お兄ちゃんが動くはずないじゃん。

隼人の事、あんましいいようには思ってないんだし。


…でも場所が場所。隼人が居る場所がお兄ちゃんの耳に知られるなんて。

でも、そう思ったのも束の間だった。


「響さん、隼人が何してんのか知ってた」


そう言った夏美の言葉に思わず目を見開く。


「…え?」

「情報…入ってたみたい」


うそ…何で?

混乱してきたあたしの頭。

ただ今の状況を直ぐには飲み込めなかった。




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