その手に触れたくて

話を終えたあたしはやるせない気分のまま家に入った。

そのまま自分の部屋に直行したあたしはもちろんお兄ちゃんと顔を合わせてない。


その後、お兄ちゃんは何処かに出掛けたみたいだったから結局は何も言われないまま顔すら合わさなかった。

って言うか会いたくないかったのほうが正しい。


その日からお兄ちゃんと会う日なんて全くなかった。

お兄ちゃんが家に帰って来ないってのもあったけど、あたしはほぼ自分の部屋で閉じ困ってた。


そして、あの日から1週間が過ぎた時だった。


「大変な事になってる」


そう言った夏美からの電話に訳の分からない胸騒ぎがした。


「大変って何が?」


あたしはここぞとばかりに携帯を耳に押しあてる。

夏美の声をちゃんと聞くために、あたしは耳に強く押しあてた。


「分かんないけど、剛くん達が乗り込んだって!」


夏美の声は混乱気味。


「乗り込んだって、何処に?」

「隼人ん所だよ!!」

「…え?」


隼人の所に?

何で?どうして?

だって剛くん、俺じゃ無理って言ってたじゃん。

なのにどうして?何があったの?


あたしの頭は異様なほどに回転していく。

ただ今がどう言う状況なのか把握出来ないあたしは混乱するばかりだった。

< 567 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop