その手に触れたくて
「お前もお前って…何?」
「こんな奴の為にわざわざ足を運んだ俺の身にもなれ」
「は?意味分かんない…」
「やっていい事と、悪い事がある。それを踏み躙ったのはコイツだ」
鋭い目つきでお兄ちゃんは隼人を睨む。
手を離してしまうと、また隼人を殴っちゃうんじゃないかって言うような勢いのお兄ちゃんの腕を離す事は出来なかった。
でも、
「…響?」
暫く経って不意に聞こえた声にあたしの手はそっと離れた。
「終わったぞ」
付け加えられた言葉にゆっくりと視線を向けるその先には悠真さんが居る。
悠真さんの表情は至って普通で、その後ろには数人いる。
…見た事もない顔ぶれ。
でも、直司達の姿はない。
来て…ないの?
そう思ってると不意にあった悠真さんとの視線。
その何気に合った視線から悠真さんは何も変わらないまま口角を上げた。
「…美月ちゃん。…大丈夫?」
そう問い掛けてくる悠真さんに、
「コイツの心配なんかいらねーよ」
面倒くさそうにそう言ったお兄ちゃんは何もなかった様にあたし達に背を向けて歩きだした。
ほんとに、ムカツク。