その手に触れたくて
そのお兄ちゃんの姿を見た悠真さんはフッと短く息を切らす。
「もう終わったよ?響が全部終わらせてくれた。だから他の皆も無事」
「……」
「まぁ…アイツの熱はまだ冷めてねーから相当機嫌悪いと思うけど…」
「……」
「でも、優しい兄ちゃんじゃん」
そう悠真さんが言った瞬間、何処が?って思ってしまった。
さんざん隼人を殴っといて何処が優しいの?って思った。
姿を消していく悠真さん達を見てから、未だ横たわる隼人にあたしは無意識のうちに駆け寄った。
「隼人!?隼人大丈夫?」
隼人の身体を揺さぶった拍子に隼人は何回か咳き込む。
切れてる口元から滲む血が痛さを表す。
「ごめん、隼人!!」
鞄の中からハンドタオルを出したあたしはソッと隼人の血を拭きとった瞬間、瞬時に隼人に握られたあたしの手がピタっと止まった。
「…ごめん、な。…美月」
擦れそうにそう呟いた隼人の言葉に涙が滲んだ。
その掴まれた隼人の手が何だか異様に冷たく感じる。
「隼人が謝る事ないじゃ――…バチンッ――…」
あたしの言葉を遮って響いたのは隼人の頬から。
思わず目を見開くとあたし達に割り込んできた夏美だった。
顔を顰めて俯く隼人を夏美は思いっきり睨みつける。
「ちょ、夏美!!」
そう言ったあたしの声など無視して夏美はここぞとばかりに睨みつけた。