その手に触れたくて
「アンタ、最低だよ!!」
そう叫んだ夏美の声は辺り一面を響かせた。
「夏美…もういいって」
夏美の腕を軽く揺すると夏美は更にあたしを睨む。
「はぁ!?何がいいわけ?さんざん悩んで悩んでしたのにもういいって何?」
「……」
「元はと言えば隼人が撒いた種じゃん!!」
そう声を響かせた後、夏美はもう一度隼人を睨んだ。
「アンタほんとに訳分かんないよ!!人の気持ちも何も知らずに勝手な事ばかりすんなよ!!響さんに殴られんのも無理ないよ!!」
「……」
「隼人が…隼人がそんな奴だとは思わなかったよ!!」
座り込んで俯く隼人は何をどう思ってんのか分かんないけど、やるせない表情をしていたのは確かだった。
怒りに満ちた夏美を宥めようと、相沢さんは何も言わずに夏美の肩をゆっくり擦る。
「…おい、夏美…」
そんな漂った空気の中、聞こえて来たのは低く呟く直司の声だった。