その手に触れたくて
終わってると言うのはHRの事で、あたしがお墓に行く時は大概HRは終わっている。
それをわざわざ夏美はあたしが来るまで待っていてくれているのだ。
昇降口付近にはHRを終えた生徒達が騒々と話し込んでいる。
「ねぇ、夏美はクラス慣れた?誰か話す人とか居る?」
上履きに履きかえると、あたしは夏美にそう言った。
夏美とは残念ながらクラスが離れてしまったのだ。
「ん―…、慣れたって言うか寝てるほうが多いし」
夏美は右手で髪をグシャっと掻き、階段を上って行く。
「夏美、まだ寝てるの?高1の時もずっと寝てたじゃん」
「だって眠いし…」
「ははっ…」
苦笑いしながら2階まで辿り着き、E組の夏美と別れて自分の教室まで足を進ませた。
あたしの教室のC組の後ろのドアから入ろうと思ったら、一人の男が両手を広げてドアに手を付き、入り際を防いでいる。
その所為で入れないあたしは、ため息を小さく漏らし前のドアまで足を進めようとしたが…、
「あ、おい。」
突然、振り返ってそう言ってきた男に思わず後退りしてしまった。
短髪の茶色の髪を無造作に立たせ着崩した制服。ちょっと怖いその雰囲気に一瞬ゾッとした。
整った眉の下には怖い目付き。
思わずジッとその男を見つめていると、
「お前、このクラス?」
そう言ってきた男にあたしは慌ててコクンと頷いた。