その手に触れたくて
「ビックリした?」
「うん。だって、てっきりタメかと…」
まさかあの2人が1個上だとは思わなかった。でも考えてみると、隼人が教科書を借りに来たのも直司だったよな…
「まあ、そんな事で夏美と仲良くしたって」
「うん。ってか、あたしが仲良くしてもらってる感じだけどね…」
苦笑い気味で言うあたしに直司はクスクス笑う。
でもホントあたしが夏美に仲良くしてもらってるって感じだ。
薄暗い夜道の中、他愛もない会話をし、あたしの家まで着くと、あたしは自転車から下りた。
「なんかホントにごめん。ありがとう」
「いえいえ」
「焼肉も奢ってもらったし、なんか悪いね」
「気にしなくていいって。そんじゃあ自転車借りて行くから…」
「うん」
自転車を漕ぎながら進んで行く直司は途中で、「あっ、」と声を漏らして止まり、後ろを振り向く。
不思議に思ったあたしは首を傾げながら、直司を見る。
「明日、夏美に来てもらうから」
「うん」