その手に触れたくて

「あぁ…」


小さく呟き、あたしは自転車の後ろに跨りサドルの下の方に手を添える。

だけど、添えた瞬間、隼人はあたしの腕を何気なく掴み自分の腰へと回した。


その行動に思わずドキッとする。


何でか分かんないけど、昨日の直司の時、以上にドキッとする。

多分、意識しているからなのかも知んないけど、なんか身体が熱くなっていく感じ…


「昨日…」


隼人はそう言って、ペダルを踏みしめる。


「うん」

「送るのダリーとか皆いいやがって、歩きで帰んのもすげぇダリーから自転車借りて帰った。美月を迎えに行くって約束で…」

「あっ、そうなんだ。だから夏美じゃないんだ」

「アイツ何も言ってねぇのかよ…」


隼人はボヤキながら言う。


「つーか…、夏美が良かった?」

「え、いや…そうじゃないけど…」


チラッと振り返った隼人に、戸惑い気味に言うと、隼人はクスクス笑う。

でも、夏美には悪いけど隼人で良かったって少しでも思ってしまった。


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