その手に触れたくて

「そういや昨日、夏美すげぇ喜んでた」

「あたしも楽しかったよ?」

「そっか…ならいい」


うっすら笑う隼人にあたしも微笑む。

やっぱし…隼人の事、気になる…


暫く走った後、目の前には学校が見えてきて校門を潜ると、隼人は自転車置き場へと向かった。


「ありがと」

「おぅ」


自転車置き場に着くと、あたしは自転車から下り、隼人は自転車を停める。


「おはよぉー」


不意に聞こえた明るめの声にあたしと隼人が目を向けると、前方から夏美が軽く手を振りながら近づいて来た。


「おはよ夏美」

「お前、ちゃんと美月に伝えとけよな」


隼人は自転車の鍵をあたしに握らせる。


「ごめん、ごめん。昨日、すぐに爆睡しちゃって」


ハハッと笑う夏美に隼人は呆れた顔をし、校舎に向かって歩いて行く。


「あ、ちょ、隼人!!」


歩いて行く隼人の背中に夏美は突然大きな声で叫び、隼人はダルそうに振り返る。


「あ?何?」

「ってか昨日あれほど言ったじゃん。裏口から入って来いって…見つかってたらどーすんのよ!美月が言われるんだからね!!」


強めの口調で意味不明な事を言った夏美に、思わずあたしは首を傾げる。


あたしが言われるって何を?

誰に言われんの?


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