その手に触れたくて
「面倒くせぇな…そん時は俺がどーにかするって…」
隼人は深いため息を吐き捨てた後、両手をポケットに突っ込み、足を進めて行く。
隼人の背中から夏美へと目線を移すと、夏美は顔を顰めたまま息を吐き出し、ゆっくりと足を進めて行く。
「ねぇ、夏美?」
あたしは夏美に駆け寄り、肩をポンと叩く。
「ん?」
「あたしが言われるって何?誰に?」
「あー…」
夏美は小さく声を漏らした後、あたしをチラッと見る。
「隼人さ…彼女居んだよ」
「…え?」
一瞬、夏美が何を言ったのかが分からなかった。
あたしの頭の中の思考が一気に停止したようだった。
隼人…彼女いるの?ってか、居たんだ。って言うか居て当たり前か…
そんな事、考えた事なかったけど…
あたしは夏美から目線を逸らし、自分の足元をジッと見つめながら歩く。
「3年の先輩。」
「年上なんだ…」
夏美に聞こえないように、あたしはボソっと呟く。
なんか…胸が痛い。って言うか苦しいに近いかも…