その手に触れたくて
表情なんて全く分からないけど、きっと女の先輩は笑顔なんだと思う。
じゃあ、隼人は?
隼人はどんな顔してんの?
チクチクと痛みだす胸に手を押しあてて、深く息を吸い込んで吐き出す。
なんでこんなに苦しいのか分かんない。
「美月、どっか行く?」
二人の光景をジッと見つめていると、夏美の顔が目の前に現れ、咄嗟に首を振った。
「ううん…帰る」
そう言うしかなかった。
今、どこかへ行っても、きっと話なんてできない。
誰かと一緒に居る事が苦痛に思ってしまう。
「だよね。美月、なんか今日は調子悪そうだし」
「ごめんね」
「全然。ゆっくり寝てなよ。じゃあね」
手を振って歩いて行く夏美に、あたしも小さく手を振り返した。
気ダルい身体とともに自転車に乗り、あたしは隼人達の姿が無くなってから家に帰った。