その手に触れたくて

あれから3週間が経ち、あと少しで6月に入ろうとしていた。

あたしは隼人を見ないようにする為、ずっと避け続け、夏美の教室には絶対に行かなかった。

それに対して夏美は不思議そうにしていたけど、特にあたしに聞く事もなく、夏美からあたしの教室に来てくれるようになった。


時たま、隼人が直司の所に来て、あたしの教室に入って来る時もあったけど、その時はわざとらしく、あたしから教室を出たりしてたりもした。


そんなある日の放課後、いつも通り夏美があたしの教室に来て帰ろうとしていた時だった。


運動場から物凄いバイクのエンジン音が聞こえてきた。

もう帰り時もあって教室の中の数名は慌ただしく声を上げ、窓から身体をのめり込むようにして外を眺め始めた。

その衝動に思わずあたしは、あっけらかんとしてしまった。


「あ、あの人って、隼人くんの友達じゃない?」

「え、そうなの?初めて見たってか、怖い…」


次々に聞こえてくる声にあたしはキョトンとしながら辺りを見ていたら、


「美月!!」


夏美は窓から顔を引っ込めて声を上げながら、あたしの名を呼んだ。


< 79 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop