その手に触れたくて
「告ったのはどっち?」
「俺。」
「もしかして…ヤった?」
「はい」
その直後、剛くんはチッと短い舌打ちをし、一旦宙を仰いでから視線を下げる。
「あー…マジうぜぇ…」
そう言って剛くんはジーンズのポケットに入れていた片手を出し、指をポキポキ鳴らした後、剛くんは宮本くんの胸倉を掴んだ。
「やめて!!」
剛くんが宮本くんの胸倉を掴んだ瞬間、そう叫んだのは相沢さんで、相沢さんの高い声が廊下に響き渡る。
その所為で数名の生徒達はオドオドしながら相沢さん達の光景を見ながら、そそくさと姿を消して行く。
心の中ではあたしも姿を消したいって思ってんだけど、なかなか足が進まなくて、夏美さえも呆然と立ち尽くしたままだった。
「やめてよ!!声かけたのも誘ったのも全部あたし!!宮本くんは悪くない!悪いのは全部あたし!!こんな事になってんのぐらい剛だって考えたら分かるでしょ?だから殴んないで!!」
張り裂けんだ相沢さんの声に剛くんは宮本くんの胸から手を離し、深く息を吐き捨てた。