その手に触れたくて
「みーづき!」
昼休み、騒々した教室に夏美の声が響き、あたしはドアに目を向けた。
後ろのドアから手を振っている夏美を見て、あたしは席を立ち夏美の居る所に向かう。
「購買行こ」
「うん。今日もメロンパン。」
「ホント美月はメロンパン好きだねぇ…。毎日食べて飽きないわけ?」
「好きだから飽きないよ。しかもさ購買のメロンパン、中にクリームが入ってるんだよ?凄いでしょ?」
「はいはい。分かったから急ぐよ。売り切れるし」
夏美はあたしの言葉をサラッと流し、階段を掛け降りる。
その後を着いて行き、階段を下りた所にはパンを買う人達で溢れ返っていた。
いつもこの人集りに息苦しくなる。
あたしは人集りを後ろから押し退けてパンが並ぶ箱に目を向けた。
「えっ?」
目を向けた先は、カラの箱でメロンパンの姿さえ見えない。
いつも一番端にメロンパンが置いてあって、いくら遅くても必ず2〜3個は残ってる。
なのに、今日はそのメロンパンがない…
「嘘でしょ…」