廃陸の旅団
「何でよマリア。何でなのよ!!?」
マールの瞳から涙がこぼれ落ちる。
マリアは優しくマールの顔を拭う。
「マールあなたは軍を憎んでいましたね。なのに何故、そうまでして軍人であるカムイを助けようとするのですか?」
マールはマリアの問いに、カムイを見つめて答える。
「そんなの知らないわよ。2人が軍人なんだってロディーに聞かされた時、こんなやつら死んじゃえば良い。って思った……」
マールはしゃくりを上げながら、震える声で話す。
「でも、カムイがああなった時に、死んじゃ嫌だ。って思った。大切なんだって思ったの。」
「……まったくもって下らない情ですわね。そんなものであの憎しみが忘れられるなんて。」
「マリア……?」
マリアは立ち上がるとロディーからブルー・スフィアを取る。
「私達は軍を許すことなどできません。しかし、軍人は軍服を脱げば、騎士は鎧を外せば同じ人間です。何より彼等はマールを助け、騎士を護ってくれました。」
マリアはマールの手を取るとブルー・スフィアを手渡した。
「ならばもう助けぬ理由など無いではないですか。ねぇマール。」
マリアは最後に優しく微笑んだ。
その顔はまさしく聖母と呼ばれるにふさわしい温かなもなだった。
マールはブルー・スフィアを握り締めるとカムイの元に駆け寄る。
「私の力じゃ足りないわ。だから例え私の生命力が削られようとも彼女を召喚するしかない。」
「マール様……あの術を使うのか。」
マールはブルー・スフィアを手にもち、頭の前で十字架を描き、ゆっくりと手を組んだ。
とても長い詠唱が始まる。
辺りにいる人にも緊張が伝わり、皆が固唾を飲んで見守っている。
「カムイの傷を癒して『ドリアード』」