廃陸の旅団
「ごめんなさい私が人質になんかなるから。」
マールを無属民から奪還した一行。
しかしクラナド救出の任務は失敗に終わってしまった。
「マールちゃんのせいじゃないわ。」
リリーがマールの傍に寄り添う。
「私も迂闊だったよ。にしても……四天士のナンバー2があんな小さなアジトにいるとはね。」
「物凄いゆったりとした流れのフォースなのに、どこか深く底の知れないものを感じました……」
リリーはアニスのことを思い出すと、恐怖に身体が震えた。
「封魔のアニスは軍の指定する危険分子の1人だ。あまり表に出てこないことでも有名で、なんとか捕まえたかったんだがな……」
「オレ達が邪魔だったんだろ?」
マールとリリーの懸命な介護の末、なんとかトラウマから立ち直ったカムイが、不貞腐れたように言う。
ニーガルの顔は曇ったままだ。
「いや、正直なところ君達が居なかったところで分からなかったよ。私もできれば"アレ"は使いたくないしね。」
「アレ?」
ニーガルは口を滑らせてしまったことを少しだけ後悔したが、のらりくらりと話題を変える。
「……それより気になるのは何故、私達が来る時に限ってアニスが現れたのか?だ。まるで私達の動向が無属民に伝わっているかのように……」
「まさか軍にユダ(裏切り者)が?」
「まさかな……いや。そんなことは決してない。このことは決して口外しないように。」
カムイは完全に納得してはいないが渋々とうなずいた。
そして夜。
皆が寝静まった頃、ニーガルは一人ベランダから暗くなった町を見ていた。
「軍にスパイなどいるわけがない……しかし一応気に留めておいた方がいいかもしれないな。」