廃陸の旅団
廃陸の旅団がアンバー・タワーから去って、いち夜が明ける――
タワーの所々では一晩かけてようやく消し止めた炎の煙がいまだにモクモクと上がっていた。
「くっ……ニーガルがここまでやられるとは。」
ローザスは総合救護室を訪れていた。
そこでは大ダメージを負ったニーガルがスクルドの懸命な処置を受けていた。
「全身を鋭利な刃物で切り裂かれ、更に傷口に深刻な凍傷を負っていました。わしと他3人の治癒術によりなんとか一命は取り留めましたがの……」
「スクルド老師、交代いたしましょう。少し休んでください。」
交代としてやってきた若いヒーラーがそう言うと、スクルドは汗ばんだ顔でにこりと笑いかけた。
「ありがとうハイル。お言葉に甘えさせてもらうことにするよ。」
「はい。」
ハイルはニーガルに手をあてがうと詠唱を始める。
青白い光は病室いっぱいに淡く広がり、出ていくローザスとスクルドの背中を照らしていた。