廃陸の旅団
「負傷者3408人。内死者267人か……予想以上に甚大な被害を被ってしまったものですな。」
「総監の不在にこんな事態になってしまっては、総監に会わす顔がありませんな。」
ローザスは直ぐ様緊急の上層会議を開く。
各部隊の隊長がアンバー・タワーのある一室に呼び出された。
その中にサーベラー隊長ニーガルの姿はなかった。
「今や廃陸の旅団もただの無法集団へと墜ちたか……」
「初代団長"天帝"のオスカーが行方を眩ましてからはやりたい放題じゃからな。」
スクルドを始め十数年前から隊長をしている者達が廃陸の旅団のことを語るが、若い軍人にはなんのことだか分からなかった。
「それにしても、たった100人程度にここまでやられるとは……」
「ああ、二十年前に"影"を壊滅させてから少し気を抜いてしまっていたのは事実だな。より高い次元での兵の育成が急務だろう。」
そんな重苦しい空気の中、ガンマー隊長クルーが聞く。
「旅団のリーダーの正体は分かったのですか?」
ローザスは顎で指示を出すと、扉の所に立っていたエージェントらしき女が、隊長達に資料を手渡す。
「逃げ延びた廃陸の旅団構成員の情報だ。よく目を通しておいて欲しい。」
エージェントから資料を手渡されるとクルーはすぐに目を通した。
「現旅団長"氷空-ヒョウクウ-"のジン。名前と通り名以外の情報は一切なし。鎖を使い、氷系の呪術を使う模様。……か。」
皆が目を通し終えたのを見て、ローザスはゆっくりと立ち上がった。
「これからは旅団も最重要危険分子として制圧に乗り出す。連れ去られた新人サーベラーも心配だしな。」
連れ去られたカムイの安否は誰も知らない。
「もしカムイが脅され向こう側に付いてしまっていたとしたら、どうなさるのですか副監?」
クルーの質問にローザスは一瞬言葉を詰まらせたが、トップである威厳のこもった声で言う。
「意志の有無は関係なく軍にあだなす様ならば誰であろうと消す。それだけだよクルー。」
「……了解です。」