廃陸の旅団
第二章〜それぞれの翼〜
時は流れ
「…………よってここに、ウェイバー副隊長にリリー・ホフマン軍曹を任命する。」
大ホールに正装をした軍人が集まる。
リリーは壇上に登り、現ウェイバー隊長から、副隊長の任命証を受け取った。
「副隊長となり一層の危険な任務、そしてより大きな責任が問われることになる。が、君なら出来ると私は信じているよ。」
「はっ。」
リリーは堂々と敬礼をすると壇を降りていった。
「いやぁ格好良かったよリリー。」
「……その声は、マールちゃん!?」
しばらく見ないうちにすっかり成長したマールの姿にリリーは驚く。
以前はリリーの肩くらいまでしかなかった身長も、今ではリリーと並ぶまでになっていた。
アンバータワー強襲及び新人サーベラー拉致から三年。
廃陸の旅団の行方は知れず軍は手を焼いていた。
「カムイが連れ去られてから3年。きっと私が連れ戻してみせる。その為に力を付けたんだもの。」
何に対しても遠慮しがちだった大人しい少女の姿は、もう面影すらもない。
リリーはこの3年という時間を己の鍛練の為だけに使った。
それも全て――
「愛するカムイの為よねリリー?」
「へっ……?そ、そそ、私はそんなつもりじゃ、だってカムイは同期で、でもって、あれ?」
マールのからかいに動揺してしまう姿は以前と変わってはいないが、確実に前へと進んでいた。
「何やら騒がしいと思ってきてみたら懐かしい顔ですね。」
そんな2人の元に現れた男。
「ニーガル。相変わらず忙しそうね。」
「最近はそこそこですけどね。世界各地の修道院を巡り、至る所で負傷者の救護に当たる旅をしていた貴女ほどではありませんよマール。」
3年という月日の中で、リリーだけが成長していたわけではない。
マールは旅団強襲の復興を手伝うと、再びガブリエルを訪れた。
そこでマリアとロディーにより、修道院への復帰の条件として、世界各地を周り悩める者を救い、傷ついた者を癒す旅に出ていたのだった。
「成長が見て取れる様です。あの頃の"天才少女"も、もはや少女と呼ぶには無礼ですね。」
「へへ、ありがと。」