廃陸の旅団
「ここは前にジン様と前団長と来たのですが……その頃はまだ霊山とも呼ばれておらず今のようにミノタウロスもおりませんでした。」
「ああ、あの時も廃れ始めてはいたけどここまでひどくなかったな……」
ジンとシルファは記憶と今の現状を照らし合わせるように何度も辺りを見回していた。
「そういえば前団長ってのはどんな人なの?」
カムイがそう聞くとジンは少し困った様な、嫌な顔をした。
「え……うーん。何ていうかそのあれだよ。無類の女好き。」
「はぁ!?」
「前にここに来た時もグリーン・スフィアを取りに来たんだけど。山頂付近で遭難した女を見つけて、オレらを放ってそいつと一緒に下山しちまいやがった。」
思いがけぬ前旅団長の話にカムイは聞くんじゃなかったと後悔した。
抜群のバトルセンスを持つジンの前の団長というから相当なフォースマスターなのだろうと期待したのだが間違いだったらしい。
「あの後は大変でしたね。コカトリスの巣の近くまでジン様と私で行ったら周りを囲まれてしまって……そうそう調度こんな感じで。」
いつの間にか三人の周りを十数匹のコカトリスが囲んでいた。
鶏冠を逆立て、全員が威嚇態勢に入っている。
「シルファ、何落ち着いて言ってるんだよ……さっそくピンチだな。うん。こりゃピンチだ。」
なんだかんだ言ってもジンは頼れる男だ。
口ではそう言っているがすでに戦闘態勢に入っていた。