廃陸の旅団
「油断は大敵だと知らなかったのかなジン?」

ミノタウロスの声が届いた瞬間。

氷の結界にヒビが入り、音を立てながら崩れ落ちた。

中から出てきたミノタウロスは全身に傷を追っている。

「しかしおもしろい術だ。超零度の空間で硬化した皮膚を無数の氷粒を含んだ気流が、まるで鋭利な刄のように空間内の標的を切り刻む。その様を氷狼とたとえたか。」

「怪我してる割に落ち着いた観察だな。」

ミノタウロスはジンの言葉を小さく笑い飛ばす。

「分かっているのだろう?お前の方が重傷を追っていること。」

折れたわき腹の痛みでジンは冷や汗をかいていた。

さっきまでの楽しげな表情も今はなく、苦痛に顔を歪めている。

「もはやその怪我では息をすることすら辛いのだろう?」

「へっ。お前を倒すのにこんくらい調度良いハンデだよ。」

ジンは枯れ木に身を任せながら、何とか立ち上がる。

そして、その虚ろな目でミノタウロスを見据えた。

「どうやら見込み違いのようだったようだな。しょせんは天を汚す咎人か。お前はもっと賢いヤツだと思っていた。死にたいのならば致し方ない。分断せよ『獣皇一閃』」

ミノタウロスの斧がジンの体を真っ二つに切り裂く。

わずかな時間差で上半身と下半身が地面に崩れ落ちていった。

「さて…先に行った人間を追うとしよう。」

ミノタウロスがカムイ達を追うために歩き始める。

「ちょっと待ちな。」
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