廃陸の旅団

知念師の業

その頃カムイとシルファは山頂へと辿りついた。

そこは暗黒の雲が辺りを包み込んでいる。

「何もいない……?」

「いえ、微かですがフォースの名残を感じます。何かいる。もしくは何かがいたのか。」

二人は辺りをくまなく見渡すが何もいない。

枯れはてた山並みが続く。

すると――

「クエェェッ。クエェェッ。」

人の数倍はあろう巣の中から声がした。

カムイはゆっくりと巣を登り、中を覗く。

「これは――」




「変種コカトリスは死んだ!?」

ミノタウロスに告げられた驚愕の事実にジンは言葉を失う。

「いまあの巣にいるのは彼女の残した雛達だけだ。私はあの子達を守らなければならなかった……だがこうなっては仕方がない。」

ミノタウロスは哀しげな表情で天を見上げた。

「その雛は普通種なんだな?」

「ああ、親もいないただの雛鳥だ。お前達が手を下す迄もなくじきに果てるだろう。」

「――――っ。」

ジンはゆっくりとミノタウロスの首を締めあげていた鎖をほどく。

「ジン、何をしている?」

「んな雛鳥の親代わりを殺したら後味悪いだろうが。さっさと行けよ。」

「私のスフィアが欲しかったんじゃないのか?」

ミノタウロスは破れた鎧の隙間から首筋に埋まっている、グリーン・スフィアを見せた。

「うっせ子守りなんかしてるへたれた魔物のスフィアになんか興味ねんだよ。」

ミノタウロスは微笑む。

「まったく、どこまでも面白いやつだな。ジンこれを受け取れ。」

ミノタウロスは袖から何かを出すと、ジンにむかって放り投げた。

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