廃陸の旅団
「やっと見つけたよ。待ちなカムイ!!」
後ろからはつらつとした女性の声がした。
カムイがゆっくりと振り返るとそこにはクルーと……リリーの姿があった。
「カムイ……何でこんな。」
リリーの悲痛の叫びがカムイの心を揺れ動かす。
カムイにはこの感情がまだ理解できずにいた。
蔑まされ生きてきたカムイには愛するという感情が分からないのだ。
「カムイお願い戻ってきて……」
リリーの説得は涙声になっている。
広い廊下にリリーの涙が零れ落ちる。
「頼む二人とも退いてくれ。傷つけたくないんだ。」
カムイは言う。
その声が少し震えているのに気付いたのはクルーだけだった。
クルーは二人以上に二人の感情が分かってしまった。
「退くのはあんただよカムイ。今からでも罪を償うんだ。」
クルーはカムイを諭すように言った。
カムイとリリーはお互い愛情を抱いている。
共に行動した日は短く、愛情を育むには時間が足りなかったかもしれない。
しかしカムイがさらわれリリーはカムイを思っていた。
カムイも何故かリリーのことが頭を離れなかった。
「カムイ……」
そうして会えなかった時間が知らぬ間に二人にそんな感情を芽生えさせていたのかもしれない。
それだけに運命とは残酷だ。
思い合う2人は今、戦場で対峙しているのだから。