廃陸の旅団
「どうしてだいカムイ!!あんたはこれほどまでに皆から思われている。それが何故分からない?」
クルーは依然として銃を突き付けたまま叫んだ。
「思われている?オレが?」
「そうよ。私はこの三年間あなたの無事を祈っていたわ。そしてあなたを救うために力を付けた。」
リリーの叫びにもカムイには理解できない。
「天を目指すと言っただけで軟禁されたオレを世間はどんな目で見ていた!!そんなオレが居なくなった所で誰が気にすると言うんだ!!」
「カムイ……」
クルーは銃を降ろすとゆっくりとカムイに近づいていった。
そして力いっぱいにカムイを抱き締める。
「カムイ、あんたはもうあの頃の蔑まされていた少年じゃない。私もリリーもニーガル中将も、みんなあんたを待っていたんだよ。」
抱き締められた体温がカムイに伝わる。
母親を父親を軍に奪われてしまって以来の感覚にカムイは涙をこぼした。
しかし。
「ありがとうクルーさん。でも……」
カムイはクルーの腹部を拳で打ち抜く。
「ぐっ……不意打ちとは卑怯な。」
ドサッと音を立てながらクルーが床に倒れこむ。
その姿を見てリリーがカムイに向かってくる。
その拳をひらりと躱すと、カムイはできるだけ優しく、手刀でリリーの細く白い首を打った。
「さようなら親愛なる人。」
リリーはどさりと床に倒れ落ちていく。
気絶させられる直前リリーはカムイの告白を聞いていた。
その嬉しさ、そして悔しそうからリリーは涙を流した。
そして薄れゆく意識の中で、去っていくカムイの背中をいつまでも見つめていたのだった。